ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

シリーズ前作の『虐殺器官』と比べるとずいぶんと洗練された作品に。続けて雪風の新作読んでしまったのでそれと比べるとなんだけれども、新人としてなら将来が期待できる……。

(;_;)

作中での生府の描写や自意識の問題についてはさておき。主人公を駆動するのがそれとは別のロジックで貫かれていたのが鮮やか。ミァハの「生」を完結させる=自殺のための物語。他人=トァンが居て初めて自我が成り立つ。取り込まれてしまったキアンは可哀想ではありますが、それこそが自我の暴虐かつ存在意義。

陵辱から生まれたミァハの自我や、そのネガ(というかポジ?)の生府社会、人類補完計画なラストといったものが目を引いてしまうかもしれませんが。そこらへんの装飾にはあまり意味のない話かも。SFとしては今更、でもありますし。

ケルトの神話―女神と英雄と妖精と (ちくま文庫)