A STORY FOR YOU
あなたのための物語 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
- 作者: 長谷敏司
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/08
- メディア: 単行本
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同著者の作品はデビュー作の
- 作者: 長谷敏司,CHOCO
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2001/11/30
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- 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07/18
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- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/12
- メディア: 単行本
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イーガン、チャンを経由し
伊藤計劃に肉薄する
SF史上、最も無機的で
最も感傷的な“死”の情景
とありますが。『ハーモニー』同様に『一九八四年』的ディストピア*1を受けている作品。《サマンサ》を『一九八四年』のオブライエンや『ハーモニー』のミァハと比較してみるのも一興ではあります。
とはいえ。『一九八四年』は1人の新たな党内局員が生み出される情景の物語、そして『ハーモニー』が作中キャラのミァハの生の物語であったのに対して、この作品はあくまでも『あなた』つまり読者を向いた物語。人は誰でも死ぬし、その代表として主人公はある。
『一九八四年』は同じくオーウェル著の『動物農場』と同様寓話つまり外のもの、『ハーモニー』は「ミァハの物語」をサプリメントとして消費する、読者にとってそういう位置付け。しかしこの『あなたのための物語』は「この物語を読む」という一回性の体験をこそ目的としている……。
〈どちらの場合も、自分自身のことだけに視野が狭まり、他人に攻撃的になり、自分のルールに忠実になります。恐怖に支配された人間と自己愛に縛られた人間は、
出力 出力するものが似ています〉
p176
〈これらが商品たりえたのは、言語を使って、読み手から一秒でも一瞬でも“言語を奪う”ことができたからだと思うのです〉
p267
《wanna be》に「生まれた」それは「拒絶」というコミュニケーションで主人公を通し《サマンサ》のその、個人を社会を平板化してしまうだろう野心を変えてゆくのか……なんてこととは関わり無く、主人公は死に、また読者である私も『あなた』も自分の物語=テキストを終えて行くでしょう。
永遠は無く、しかし「今」は常に自分のものとしてある*2、そんなテキストとして。