木村くんのエア彼女

曲矢さんのエア彼氏 (ガガガ文庫)

曲矢さんのエア彼氏 (ガガガ文庫)

樹海人魚 (ガガガ文庫)』を打ち切られてひとまず置いての新シリーズ。

すっとんだ設定が目立つこの作品ですが。作者がなにせ中村九郎なわけで、多少の設定のすっとび具合は「中村九郎である」というすっとび具合にくらべれば誤差範囲。すごい作家だよね。いろいろな意味で。
純粋理性批判上 (平凡社ライブラリー)
メインタイトルにある「曲矢さん」は実はこの話にあまり関係なくて、彼女は「エア○○」という状況を最も濃く体現している、というだけの脇キャラ。あるいは彼女の物語がシリーズ物としてのこれの中心になるのかもしれませんけれども。*1

主人公がある言葉を認識できない、という設定が(中村九郎作品にはよくあることですが)唐突な感じで突っ込まれているのですが、エアがどうこうというより実はこれが主題。

 ごめんの代わりに×××p294

中村九郎の魅力は瞬発力のある切ない言葉の魅力。物語自体は寓意性に満ちた設定が散りばめられていればそれで必要充分。同じく「フィクションへの耽溺」をテーマとした先の『読書の時間よ、芝村くん! (一迅社文庫 に 2-2)』と対照的ではあります。

それはさておき。エア妹ほしい。(オイオイ

*1:つーかこれシリーズ物なのか? 『アリフレロ』と同じ程度には続きを書ける話ではあるけど