戦場のライラプス

こう、いかにも「ラノベ作家が無理して大人向けミリタリー・アクション書いてみました」な感じで「せっかく移籍して出した初めての小説がこれかよ」と落胆してしまっていたのですが……。

戦場のライラプス (トクマ・ノベルズEdge)

戦場のライラプス (トクマ・ノベルズEdge)

「無駄だ。わしの防弾ベストを貫けるはずがっ――」p172

とか*1

(前略)現実はわたしの(はかな)い望みを粉々に打ち砕いた(後略)p191

とか*2。これが過去作を好きだった作家の作品じゃなかったら途中放棄してそのまま積み本の山に加わること確実な素人じみた描写が多々。もちろん軍事描写なんてのは端から期待できない*3のはまだいい*4としても……。

と、半ば落胆しながら読んでいたのでした。

……「結」に至るまでは。

“METAMORPHOSES”

熾天使たちの5分後 (富士見ミステリー文庫)
うん。名作。

過去「木ノ歌詠」名義で書かれた作品含めても一番の名作かも。

ネタバレが危険な作品なので詳細は避けますけれども。(ネタ的には「熾天使たちの5分後 (富士見ミステリー文庫)」直系のものですがむしろ)「幽霊列車とこんぺい糖―メモリー・オブ・リガヤ (富士見ミステリー文庫)」で書き損ねた部分に踏み込めていて、それを補するものとしても良。

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かならずしも読んで楽しい作品ではないですし、「百合できゃっきゃうふふ」なのを期待するとざっくりいかれるでしょうから、「幽霊列車とこんぺい糖」のそんな部分を期待する人にはむしろ全力で回避を勧めますが、そうではないあの作品のファンの人には全力で購読を勧めます。

余談

高校生になってからは、講談社ノベルズが
新本格』と銘打って出版していた推理小説を読み漁りました。
そんな経緯もあって、一度は富士見ミステリー文庫から別名義でデビューしたのですが、
新書レーベルへの憧れはずっと抱き続けていました。
その後、紆余曲折を経て流浪の身となるわけですが、
ちょうどトクマ・ノベルズEdgeが原稿を募集していると知り、
この機会を逃してはならないと思いました。

http://www.tokuma.co.jp/edge/06interview36.html

あああああ。推理小説なのに富士ミスを目指し、プロになったのにレーベル潰れて受け取り手もなし。まちがってる。いろいろとまちがってるよ著者も世の中も。

今回の受賞を機に、各方面からお声をかけて頂くことが急増しました。
まずは2月に小学館ガガガ文庫一迅社文庫から、
それぞれ新刊が出版される予定です。

http://www.tokuma.co.jp/edge/06interview36.html

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   *     +   / /   イヤッッホォォォオオォオウ!
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 ガタン ||| j  / |  | |||
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screenshot alterna's union : weblog

*1:必死の戦闘中にそんな中二病異能バトルみたいなセリフ……

*2:戦闘マシンとしてのみ育てられた人間のぎりぎりの告白に出てくる言葉じゃないよ

*3:自衛隊三国志 赤壁の戦い 下巻 (アリババノベルズ)直前に読んでいたのが「わかってる嘘」を書けるベテランラノベ/架空戦記作家の手になる「自衛隊三国志」だったので余計に気に障って

*4:そういうの期待する時は実戦経験のある海外作家のを読むし