ラヴ(クラフト)コメ
- 作者: 神野オキナ,龍炎狼牙
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- 作者: 逢空万太,狐印
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「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌、ニャルラトホテプです」
物語の構造もオーソドックスに勧善懲悪、主人公のニャル子がツンデレヒロインの真尋を守るために獅子奮迅の大活躍……うん、何一つ間違ってないな。P266 あとがき
「犯罪組織って、やっぱり宇宙規模なのか」
「ええ。ほぼ宇宙全域で暗躍しているマンモス悪い奴らです。主要な取引は、スペース麻薬とかギャラクシーペット密輸とか、いわゆるご禁制の品ですね。あと、奴隷貿易も」p29『1. 第三種接近遭遇』
惑星保護機構のエージェントであるニャルラトホテプ星人の(通称)『ニャル子』が宇宙犯罪組織に狙われた主人公を守りそしてその犯罪組織を摘発するためやって来た、という話。
クトゥルフ神話物としては、
「はい。以前、地球に飛来した我々の仲間がラヴクラフト御大と遭遇したようなんですよ」
「は?」
「その時に、連中と御大が意気投合しちゃったみたいで。我々の仲間を題材にして、御大が小説書く事になったみたいです」p50『1. 第三種接近遭遇』
というように一段メタな設定。「ニャルラトホテプ」というのも個体名ではなくて種族名であるとか、ストレートなクトゥルフ神話物とは趣が違います。
……いやこのタイトルにストレートなクトゥルフ神話物期待する人は居ないだろうけど。
『名状しがたいバールのようなもの』『冒瀆的な手榴弾』
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話のノリはコメディというよりはギャグ。邪道魔法少女系統、と言えば分かる人には分かると思いますがラノベで言えば『撲殺天使ドクロちゃん』*1とか『ばいおれんす・まじかる!』とかそこらへんのノリ。やることエグイですwww
ヒロインが「ニャルラトホテプ」*2を名乗ってるせいで、最初読んでいるときは「全部裏があっての言動じゃないか」と疑ってしまっていたのですけれども。実際は単なるオタク(笑)でした。変にクトゥルフ神話の知識がない方が素直に楽しめるかも。
ただ、メタな設定の作品なこともあり元になるクトゥルフ神話については作中でちゃんと説明されてますから(これ自体はクトゥルフ神話作品とは言えないとしても)これからクトゥルフ神話に入門する向きにはいい作品かも。*3
炎髪灼眼のクトゥグア
「う、む……あれもいわゆるクトゥグア星人の一個体なんですが、困った事に連中、よい個体も悪い個体もみんな一様にニャルラトホテプ星人が嫌いなんですよね」
「そんな事を今言うな!」
「しかもあの個体……クー子……」
「し、知ってるのか?」
「宇宙幼稚園、宇宙小学校と一緒だったんですけど、筆舌に尽くしがたい喧嘩をしてきました」P199『3. 地球の静止する日』
物語のかなりの部分が『うる星やつら』の昔からのパターン「主人公に気のあるヒロインとそっけない主人公によるシチュエーションコメディ」を雑魚敵を適当にあしらいながら続ける代物で(小ネタは楽しめたですが)それほど印象には残らないありがちコメディー、と思っていたのですが。
最終戦に入って宿命のライバルたる『クー子』が登場してからは俄然おもしろく感じるように。これは話の質が変わったというよりも(主人公がシーンから退場したため)視点がニャル子に移ったせいで彼女の心理が描写されるようになった、というあたりが理由。結局「ニャルラトホテプとはこういうもの」という自分の先入観が邪魔して素直に読めなくなっていたわけで。下手に前知識を持っているというのも良いことばかりではないですね。反省。
今作ではあんな扱いで終わってしまったクー子さんですが、続編出るならもっとニャル子と絡ませてほしいです。つーかこれはもう彼女も同じ学校に転校させて……とかやるしかないでしょう!*5
というわけで。ぜひとも続編を出して欲しい良作でした。*6