「新規作品部門」コメント

「幻想症候群」がガチ。「planetarian」が特殊。あとの残りは最近好きなまったり系ファンタジー2作と、カレーをチョイスしてみました。

幻想症候群 (一迅社文庫 に 2-1)

幻想症候群 (一迅社文庫 に 2-1)

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全て主人公が違う連作短編ですが、エピソード全てを繋ぎ合わせることで生まれてくる「意味」が見事。最初のエピソードではネガティブで逃避的なイメージを帯びていた幻想が、最終話においては……これは意味解釈すること自体がネタバレでしょうし、この作品は解釈の幅自体もが意味を持つ本物のファンタジーですからこれ以上を語るのは野暮というものでしょう。

Planetarian (VA文庫)

Planetarian (VA文庫)

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これはこの話そのものというより、キネティックノベル第1作として始まったこのシリーズがこの短編群を経て、作者の Web ページにて公開されている

PS2版初回生産分特典の小説(PC初回限定版も同じですが)の第3話に、『星の人』という短編があります。
ある意味、planetarian本編直系のストーリーとも言えるのですが、これを完成させるにあたり、本一冊でのバランスを優先して推敲時にカットした、幻のパートがあります。
これをショートストーリーに仕立て直してみました。

スズモトジェイピー 〜涼元悠一WebPage〜

に至るまでを含めたシリーズ全体への評価。

この作品単体がどうこうというよりも、Leafビジュアルノベル三部作あたりから始まった「美少女ゲーム」というイノベーション*1の最終的な帰結として感慨をこめて。

激辛!夏風高校カレー部(いもうと付) (集英社スーパーダッシュ文庫)

激辛!夏風高校カレー部(いもうと付) (集英社スーパーダッシュ文庫)

ボンカレー220 中辛
ライトノベルでこういう乾いた文体なのは珍しめ*2ですよね。おかげで物語内でのキャラクターの構図そのものが浮かび上がってよい感じ。幼馴染と部長の、いわばライスとカレーの対立構図に福神漬けたる「いもうと」が良いアクセントとなってこわばりを消し、そしてソースたるコジマ君がその味わいを強調してくれ……ってここで解説書いてもしかたないですからこれくらいに。

ゼペットの娘たち (電撃文庫)

ゼペットの娘たち (電撃文庫)

ゼペットの娘たち〈2〉 (電撃文庫)

ゼペットの娘たち〈2〉 (電撃文庫)

アニスと不機嫌な魔法使い (HJ文庫)

アニスと不機嫌な魔法使い (HJ文庫)

アニスと不機嫌な魔法使い2 (HJ文庫)

アニスと不機嫌な魔法使い2 (HJ文庫)

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今までのライトノベルだと伝奇バトったり異世界バトったりとマンガやアニメやゲームつまり映像メディアの後追い劣化物語が多くて(兄弟たるノベルスのそれと比べても)所詮はものまねジャンルという感が強かったですが、最近になってやっと「ライトノベルらしい」その消化ができてきた感じ。あまり劇的なことをしなくても成立するのが(映像メディアに対する)小説の利点の一つですし。

*1:今はもう今世紀入ったあたりからの「月姫」→「ひぐらし」→「東方」の同人オリジナル(及びそれの二次創作)や、投稿少女小説の流れを汲むケータイ小説という新たなイノベーションの時代になっていますが

*2:架空戦記とかの系統の文章だ