『電子の歌姫の容姿と法律』

これは良記事。

自分もこれくらい丁寧に書けば良かったとは思うんだけども、やはり blog に書くのだと常識的なこと(著作権そのものについて、とか)はもっと他のまともな Web リソースなり教科書なりを読んでもらうことを期待してしまって……。
ざっと眺めただけなので書かれていることと重複したり理解しそこねたりはあるかもしれませんが、気になったことを少々。

まず、理解と説明が『piapro(ピアプロ)|ピアプロ・キャラクター・ライセンス』というよりは一般的なキャラクター利用ガイドライン(例えば以前のバージョンのクリプトンのそれとか)についてのものに留まっていて、PCL の特異性が埋もれてしまっていること。

特異性というのは例えば、

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で書いたような「二次創作キャラの再利用許諾に(CPL準拠キャラを直接描くのとは違い)クリプトンの別途の許諾が必要*1」なあたりは、以前のバージョンのそれや(例えば『ブログ妖精ココロ』のそれような)他社でのありがちなそれとは違う方法と目的のもの。

そしてその二次作品の二次利用ピアプロに依存するため、以前書いたような

問題と連結してしまう。

また他の問題ですが。PCL はそれが直接対象とする「キャラクターの図像」*2のみに限らず、

第2項第3号

  • (3) 利用者は、第三者知的財産権その他一切の権利を侵害してはならないものとします。

二次創作物の制作にあたっては、他者の著作物に特徴的な創作的表現を、無断で流用してはいけません。

ピアプロ・キャラクター・ライセンス解説(2条~3条) – 初音ミク公式ブログ

つまり他者/他社の権利侵害を含む作品の禁止が PCL の規定自体に含まれるため、それに抵触すると

第7条(ライセンスの終了)

  • 利用者が本ライセンスの条項に違反した場合には、当該利用者へ付与された本ライセンスは自動的に終了いたします。これによって、当社キャラクターおよびその二次創作物の利用に関する当社と当該利用者の関係は著作権法その他の適用法令によってのみ規律されることになります。
piapro(ピアプロ)|ピアプロ・キャラクター・ライセンス

その該当コンテンツのみならず PCL による許諾全体が停止されることになります。

これは例えば、チベット国歌

初音ミクに歌わせて、それに初音ミクの絵を付けてニコニコ動画に上げた場合。チベット国歌(Gyallu)の作詞をした Trijang Rinpoche 氏は 1981年まで存命で死後50年経っておらず彼の著作権はまだ生きているので(遺族なりに許諾を得ていない限り)それは著作権侵害。無論「チベット国歌」なんだからその文脈で使われている限りは一般慣習として「黙認」でかまわないわけですが。しかしこの PCL での規定のせいでクリプトンがその可否を握る権利を持つ―― 当該利用者へ付与された本ライセンスは自動的に終了 ――ことになります。

*1:現状ではピアプロに上げるか『亜北ネル』のようにPCL準拠の契約を結ぶ必要あり

*2:“本ガイドラインの対象となるキャラクターは、以下のものです。
MEIKO』、『KAITO』、『初音ミク』、『鏡音リン』、『鏡音レン』、『巡音ルカ』”(piapro(ピアプロ)|キャラクター利用のガイドライン)